上場会社の役員向け株式売買マニュアル
以前に「売れない国内上場株式をどうするか?」で、利活用の方法として、(1)株式担保ローンと (2)株式貸借取引(貸株)について書いたが、今回は本当に売却する際の手続きについて整理する。
役員及び主要株主の売買報告制度
上場会社等の役員と主要株主(10%以上保有)が、当該上場会社の発行した株式・社債を売買したら、売買の翌月15日までに、財務局に売買報告する必要がある。
この制度の目的は、インサイダー取引と短期売買利益(6ヶ月以内)の防止を目的としている。
なお、上場会社社内のインサイダー取引防止規定等に基づき、事前承認を得て株式売買していることを前提とする。
報告には、紙媒体による郵送提出と、電子媒体による提出がある。
電子提出ファイルの作成
上記のExcelファイルに注意PDFを参照しながら入力するが、ハマりポイントとしては、
- フリガナに濁点・半濁点を全角一文字として入力する謎仕様
- 売買した証券会社の金融商品取引業者コード(4桁)
- 執行市場区分(東証=1)
- 売買区分(売=1、買=2)
電子提出ファイルの提出
電子媒体による個人による提出は、「金融庁 電子申請・届出システム(マイナンバー用)」から行う。本人確認にはスマホ版の「マイナポータルアプリ」を利用するので、予めアプリがインストールされている必要がある。
法人(資産管理会社等を含む)による提出は、「金融庁 電子申請・届出システム(GビズID用)」から行う。なお予めGビズIDを取得している必要がある。
システムに初回ログインして利用者登録を行うと、「申請・届出管理→新規登録」で「役員又は主要株主の売買報告書の提出」で検索して手続を選択する。提出先は「関東財務局理財部統括証券監査官1」(関東財務局>理財部>統括証券監査官1(電子開示システム届出書:内国法人~))
添付ファイルとして前段で作成した電子提出ファイルを添付して送信する。
EDINET利用申請
EDINET公衆縦覧書類(大量保有報告書/変更報告書など)を提出するには、まずEDINETの利用者IDを作成する必要があるが、予めID取得をしておかないと、即時にはできないので注意。
- まず、EDINET上のWebフォームから「電子開示システム届出書」のPDFを生成する
- 次に、「金融庁 電子申請・届出システム(マイナンバー用)」より、(a) 上記で生成した届出書PDFと (b) 住民票のスキャンPDF を添付して電子申請を行う
詳細について公式ガイドを参照だが、「提出先」が一癖あり、例えば都内在住の個人で大量保有報告書/変更報告書の提出予定であれば、
【提出先】関東財務局理財部(統括証券監査官3(電子開示システム届出書:大量保有報告))
になる。
ちなみに金融庁 電子申請・届出システムはAzureサーバが弱いようで、添付ファイルがついていると一定時間操作不能になる事象が確認された(1分弱放置したら解消した)
提出後に、同システム上から「EDINET届出完了通知書」がPDFで届く。こちらに記載されているログインID/PassでEDINET提出ができるようになる。
大量保有報告書/変更報告書
5%以上保有している場合に、保有比率1%以上の増減 or 重要な契約(有価証券担保契約 、株式貸借契約(貸株))の場合には、売買日の翌日から5営業日以内に変更報告書を提出する必要がある。
(参考)関東財務局:株券等の大量保有の状況等に関する開示制度(5%ルール)について
なお保有株数の増減が無い場合(発行済株式総数の変化によるパッシブなもの)は、保有比率が1%以上増減しても変更報告書の提出は不要。
EDINETでしか提出できないので、上記で作成したEDINETのID/Passを用いて変更報告書を提出する。
大量保有報告書/変更報告書の作成は、Pronexusが作成ツールを2026/5/14で提供終了するほど、毎年変更されるタクソノミが複雑であり、金融庁のWebフォームを直接利用する以外の選択肢は現実的にない。従って、EDINETマニュアルを参照しながら、EDINET上のWebフォームに入力してポチポチ作成することになる。
提出者が個人の場合は、住所記載を市区町村名まで、また生年月日の記載を省略することができるが、その場合は、別途「非縦覧書類」として報告書に添付する必要がある。
個人大株主が住所変更する場合
二種類の手続きが必要となる。また同一区内での住所変更の場合でも変更報告書の提出が必要なので注意を要する
- 提出者情報の変更
- EDINET(提出者用) >提出者用メニュー画面 >提出者情報管理 >情報照会・変更 >変更 より、「電子開示システム届出書」のPDFを生成する
- 次に、「金融庁 電子申請・届出システム(マイナンバー用)」より、上記で生成した届出書PDFと (b) 住民票のスキャンPDF を添付して電子申請を行う
- 変更報告書の提出
- 大量保有報告書の提出義務者の場合は、住所変更については、「大量保有報告書に記載すべき重要な事項の変更」(法第27条の25第1項)に該当するため、(住民票異動日の翌日より)5営業日以内に変更報告書を提出しなければならない
- 変更報告書の提出書類名は、「変更報告書 No.2」のように、当該暦年の変更報告書をNo.1 として連番を付与しなければならない(間違えると訂正報告書の提出を求められる)
- 根拠条文を間違えるとこちらも訂正報告書の提出を求められる
- 参考
Q14 氏名や住所の変更など大量保有報告書に記載すべき事項の変更があった場合にも、変更報告書の提出が必要でしょうか。
A14.
氏名や住所の変更など大量保有報告書に記載すべき重要な事項の変更があった場合について、変更報告書の提出が必要となります。
具体的には、保有者又は共同保有者について、共同保有者(数)の変更、商号変更・住所変更、単体株券等保有割合の増減、担保契約等の締結・変更、保有する株券等の内訳の変更、などがあった場合です。
なお、提出者が個人であって、その地番を含む住所全部を記載した書面を大量保有報告書等に添付の上、報告書本体においては地番の記載を省略する方法を選択していた場合において、当該提出者が同一市区町村内で住所を変更したときには、当該住所の変更に係る変更報告書を新たに提出する必要はあるものと考えられます。
Q3 報告書の提出期限はどのようになるのでしょうか。
A3.
大量保有報告書は「一般報告(個人、事業会社などの保有者が提出するもの)」と「特例報告(金融商品取引業者、銀行、信託会社などの保有者が提出するもの)」に大別でき、以下のとおり区分されております。
一般報告は報告義務発生日から5営業日以内に報告書を提出しなければなりません。(金融商品取引法第27条の23)
なお、提出期限までの日数のカウントについては、報告義務発生日(特例報告の場合は基準日)の翌日から起算して休日(土曜日、日曜日、祝日、12月29日から1月3日までの間)を除いて計算した5日間となります。したがって、通常は報告義務発生日(特例報告の場合は基準日)の翌週の同一曜日が報告書の提出期限となります。